ホーチミン(ベトナム)の賃貸住居の申込から退去まで、大まかな流れは日本と同様ですが、商慣習が異なるところもあります。今回は私(不動産仲介会社)が実際に対応する場合の、ホーチミンの住まい探しの一般的な流れについて解説します。
目次
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- 事前相談
- 内覧
- 申込
- 契約
- 入居
- 退去
事前相談
日本の不動産屋さんの様にふらっと適当な時間に店舗に行くよりも、メールやFacebookなどで事前相談の上、後日内覧を行うという方が圧倒的に良いです。日系駐在員であれば基本的に法人契約となることが一般的に多く、各法人によって様々な取り決めがある為です。私のケースだと事前に以下の様な事項を確認します。
- 立地
- 予算、支払い方法
- 物件種別、間取り、階層、景観
- 法人契約か個人契約か(TAXインボイスの有無)
- 契約開始日(入居希望日)
- 共用施設や付帯設備の希望について
上記、項目の詳細についてはこちらで解説しています。
ホーチミンの賃貸住居の種類について
賃料の支払い方法について
TAXインボイスについて
内覧
事前相談の上で該当する候補物件が見付かった場合、通常は複数の賃貸物件を当日確認します。基本となる内覧のポイントは下記の様な事項です。勿論、住まいへの拘りは様々なので、内覧時は自分の拘りポイントもきちんと確認します。
サービスアパートメントの場合
- 希望間取りの仕様、付帯設備(家具・家電)
- 共用施設
- 周辺環境(タクシー、スーパー、コンビニ、ランドリー、飲食店など)
サービスアパートメントの場合は、一般的には同じ間取りの部屋であれば、他の部屋も仕様は変わりません。(例えば501号室と601号室の室内は同じ仕様になっている。)
その為、空き状況にもよりますが、階層や景観についてはいくつかから選択できることがメリットの1つです。また入居後に騒音トラブルに悩まされたり、許容し難い室内トラブルが発生した場合には、コンシェルジュにリクエストして室内変更の相談を行うことも可能です。
コンドミニアムの場合
- 室内の仕様、付帯設備(家具・家電)
- 隣地、共用施設
- 景観、周辺環境(タクシー、スーパー、コンビニ、ランドリー、飲食店など)
- 公共料金費などの支払い方法
コンドミニアムの場合は、一般的には各室それぞれ所有者(賃貸人)が異なるので、仕様もそれぞれ異なります。その為、各室は唯一無二の部屋になり、サービスアパートメントよりも慎重に内覧を行う必要があります。入居後に騒音や室内トラブルが発生したとしても、契約後の転居手続きは非常に難しくなります。
また、せっかくホーチミンで暮らすので、なるべく日系駐在員がいない物件が良いや、逆に日系ファミリー層が多い物件が良いなどのリクエストもあると思います。サービスアパートメントであれば日系駐在員の占有率、日系ファミリー層であれば日本人学校のバスの乗降リストなどを基にこれらのリクエスト対応も可能になります。
申込
申込を行いたい物件が決まった場合、下記の事項について確定させます。
申込時に必要な確定事項
- 契約名義(法人契約or個人契約)
- 契約開始日(入居希望日)
- 付帯設備(家具・家電)と付帯サービスについて(公共料金費・ルームクリーニングなど)
- 賃料支払い方法
一般的には物件を抑える為に手付金の支払いが必要になります。A-B級のサービスアパートメントのケースでは、オファーレター(最終条件提示書)を発行してもらい、文書の有効期限までは手付金なしで物件を押さえられるケースもあります。法人契約の場合は、手付金の支払いまで時間が掛かるので、そのような場合は不動産仲介会社が立替を行うケースもあります。
賃貸住居の場合には、手付金は賃料1ヵ月分以下で調整され、実務上は5,000,000~10,000,000 VND(ベトナムドン)程度が求められるケースが多く、手付金を支払うと、物件を抑えて契約手続きに入れるので、社内稟議に時間が掛かるケースでも安心して進められます。但し、 手付金を支払った後にキャンセルすると、手付金は没収されてしまいます。 この点は注意が必要です。
契約
契約を行う場合には、日本よりもシンプルです。求められる書類などは非常に少ない為、契約行為は非常に楽です。連帯保証人や保証会社の設定なども必要ありません。
契約時に必要な情報(法人契約の場合)
- 法人情報(署名者の役職や現地法人であればTAXコードなど)
- 入居者のパスポート情報
契約時に必要な情報(個人契約の場合)
- 契約者&入居者のパスポート情報
日本と同様に賃貸借契約書が貸主又は不動産仲介会社から用意されます、賃貸借契約書は英語とベトナム語が併記されているので、外国人の多くは英語版を基にレビューを行います。
やはり、金銭関係についてしっかり確認を行います。
- Deposit (保証金)日本でいう「敷金」
物件を借りる際は「Deposit(保証金)」が必要となります。一般的に賃料の1~2カ月分で設定されています。Depositは契約満了後、修繕が必要な箇所(故意過失による破損)がなければ満額返金されることになり、日本の様に原状回復費用などの名目で相殺されることは少ないです。(室内が通常損耗以上に汚れてたらそれは別ですが。。。)
- Rent Fee(賃料)
賃料の支払いサイクルは1~3カ月毎の前払いで、通貨はVND、銀行振込が原則となります。現地法人をまだ設立していないのでVND送金が行えない場合には、USD送金を行います。USD送金の場合にはまた注意事項があり、別途解説します。
物件の種類や契約期間によって異なりますが、商慣習としては 「契約期間中の途中解約は保証金没収」が原則です。
但し、例えば1~2か月前の解約予告をした場合や、帰任辞令などの法人都合による途中解約の場合で、保証金を返金するという特約を付けられるケースもあります。その為、途中解約を行う可能性があれば、まず雛形ではどのような条件になっているか確認をした上で、保証金返金特約の交渉を行います。元々設定されている物件もあれば、交渉が行えない物件もあり、ケースバイケースですので、事前相談の段階から保証金返金特約について必須条件に入れるか、それとも短期契約可能な物件を選定されることでリスク回避を図るかなどになります。
2020年度はコロナの影響で急遽日本への帰国を判断し、途中解約を行うケースが増えてきています。このコロナによる日本への帰国(途中解約)が不可抗力に該当し免責となるか否かについては、個別に交渉を行う必要があります。また今後は、「疫病」や「感染症」による国外退去による途中解約は免責とする(保証金を返金する)などの特約追記などの具体的な対応が必要になってくるかなと思います。
また、貸主による途中解約についても同様に注意が必要です。日本では借地借家法によって貸主からの途中解約の申出についてはかなり厳しい制限が設けられていて、正当事由や立ち退き料などが提示されるのが一般的ですが、ホーチミンでは契約書上、貸主からの途中退去についても言及されていて、一般的には「保証金の2倍」を立ち退き料とすることで申出が可能とされています。契約満了後には更新を行わないとすることも可能なので、その場合には立ち退き料もありません。私が実務上把握しているケースでは、貸主からの途中退去の申出は以下の様なケースです。
- 2018-2019年度、ビンタン区にある Vinhomes Central Park の主に Landmark Plus で購入者への2ヵ年の賃料保証が終了するタイミングでの賃貸借契約切替に伴う途中退去申出
- 2019年度、ビンタン区のファンビッチャン(Pham Viet Chanh)通りにある The Romaというサービスアパートメントで、所有者変更(香港系投資会社)による全室途中退去申出
- 2020年度、ビンタン区の Saigon Riverside Residence が所有者変更及びオフィスへの用途変更に伴う全室途中退去申出
などがあります。2020年度はコロナ収束後に1棟ものの売買が加速する可能性もあり、その場合には貸主からの途中退去の事例が今後増えてくる可能性もあります。
入居
契約手続きを完了すると、いよいよ入居手続きになります。
入居時に確認すること
- 付帯設備(家具・家電)表を基に室内チェック
- 電気、水道メーターのチェック、支払い方法の確認
- 共用施設、電子錠の利用方法
またコンドミニアムの場合には、引越業者さんを利用される方が多いと思いますが、管理会社へ作業日時の登録を行わなければ作業が行えないので注意が必要です。自身で手配される場合には、管理会社への登録を忘れてしまい、当日作業開始が遅れてしまうケースがあります。
退去
退去時も入居手続きと同様の確認を行います。忘れてはいけないのは保証金の返金方法や日時になります。特に退去&日本帰国を同日に行う場合には、法人契約であれば後日法人口座へ保証金返金で調整できますが、個人契約の場合には同日に保証金返金を受けたい場合には事前調整が必要です。
退去時に確認すること
- 付帯設備(家具・家電)表を基に室内チェック(入居時と変動がないか)
- 電気、水道メーターのチェック、最終支払い
- 保証金の返金について
以上が、ホーチミンの賃貸住居の申込から退去までの大まかな流れになります。法人契約の場合には基本的には契約手続きなどは総務担当の方に任せてしまって構いませんが、室内利用において精算が発生した場合に保証金から相殺としていいか、それともそれは個人負担となるかなどが確認が必要かなと思います。